絵が描けなかった漫画制作会社の新人が「まんがのそざい」でまんがが売れるようになった話 第2話
前回のお話:第1話
漫画制作会社に入ったのにベテランスタッフの実力に圧倒されて、漫画の仕事ができなかった新人が、「まんがのそざい」で漫画の仕事をもらえるようになるまでのお話。
コロナ禍真っ只中の2021年春。絵も描けず漫画の仕事ができない状態の私が入社した
漫画制作会社の画屋は、ある課題を抱えていました。
「入ったばかりの新人が、すぐにベテランのような漫画が作れないのは当たり前。」
「だけど新人が育たないんだ」
社長は常に悩んでいました。
うっ、申し訳ない。
ベテランスタッフは絵も漫画の構成も、基本的なことをばっちり押さえているから、お客さんの要望に合わせて臨機応変に対応することができていました。だけど新人にはそれができません。
社長の悩みは私の心にチクチク刺さって、私は本当に漫画を描く仕事ができるようになるのかと不安な気持ちでいっぱいになりました。
でもそれは私が入る前からの課題で、会社も対策を考えていました。
「「マーちゃんのLP」、これならできるかもしれない!」
「マーちゃんのLP」は、5歳の女の子とネコのキャラクターの掛け合いで構成されたLP用の漫画。既成のキャラクターと決まった物語の構成があるから、新人でも真似るだけで作ることができると考えられ、ウェブ制作会社と協力してできた商品です。実際、商品自体は好評で、何件かの注文がありました。
それでも、新人はベテランスタッフのような絵を描くことも漫画の構成をすることもできなかったんです。
「これもダメか…」とさらに社長の悩みを増やしてしまう結果となりました。
同時に「4コマ漫画なら新人でも作れるだろう」とデザイン会社とコラボして誕生した商品「4コマ漫画名刺」も、新人用の仕事として価格を落として販売したのに、結局新人のカバーをベテランがカバーする形になってしまい、新人にはできないという結果になってしまいました。
会社はこの時、小冊子やパンフレットといった紙ものの商品の注文が減っている状況に加えてコロナ禍になり、展示会などのイベントは消滅、受注がゼロになっていました。そんな中、漫画制作の戦力にならない新人が入って、さらに危機的状況に陥っていました。
私の入社前から受注していた案件、「ビッグプロジェクト(この会社にとっては)が終わるといよいよ仕事がなくなるぞ!」と社長が毎日慌てているのを見ていました。
「今は動画が流行っているらしい。ウチもこれからは動画をやろう!」
苦渋の判断で紙へのこだわりを捨て、漫画動画「コマワリムービー」を始めました。
「動画編集はベテランでもできる人がいない」
「あなたができるようになったらこれで稼げるかもしれない!」
「だから動画編集やって!」
社長の無茶ぶりに私は困惑しました。
「私、動画なんてやったことないんですけど…!?」
漫画を作れない状況で、なんとか私が食べていける方法を作ってくれたんだと思うと提案に乗らないわけにはいかないと思い、私は一からアフタ―エフェクトの操作方法を勉強して、簡単な動画編集ができるようになりました。
「自社で漫画も動画も作れるようになった!」「これで漫画も動画も注文を受けられるぞ!」
と社長の期待は大きくなっていて、私も一緒に、漫画の仕事ではないものの、ようやく会社に貢献できる!と思っていました。
動画が今流行っている。乗るしかない、このビッグウェーブに。動画の注文をバンバン受けて売れるぞ!
そう狙っていたのに、蓋を開けてみると、流行っていたのは実写の動画だけで、漫画動画というものはそこまで流行っていなかったんです。
実際に「コマワリムービー」の注文はありましたが、期待したほどの大ヒットにはなりませんでした。
社長はすっかり落ち込んで、周りの経営者に相談したり、マーケティング本を読み漁るようになりました。
「もう受託の漫画制作じゃダメかもしれない…」
漫画制作会社なのに、漫画が売れないという大ピンチ。
私は漫画の仕事ができるようになるのか…?どうなる画屋!?
つづく
次のお話:第3話