絵が描けなかった漫画制作会社の新人が「まんがのそざい」でまんがが売れるようになった話 第1話
これは、絵が描けないまま漫画家を目指した新人が、「まんがのそざい」で漫画の仕事をもらえるようになった物語。
話は、私が入社する前にさかのぼります。
私の家は、両親が漫画好きなこともあって常に漫画に囲まれていました。
漫画の絵を見て描くことが好きだった私は、しだいに自分でも物語を作って描いてみたいと思うようになり、中学生になると見よう見まねで漫画を描き始め、高校生の頃からは出版社への投稿、専門学校に入学してからは持ち込みもするようになりました。
持ち込みをして編集さんに見てもらったある時。
「うーん…絵柄は○○先生っぽいけど、絵の基礎も話もできていないね」
自分でも実力不足なことは自覚していたから、編集さんからの指摘にはそこまでダメージはありませんでした。
ところが、編集部からの帰り道。私は漠然とした不安に駆られました。
「このままじゃ漫画家にはなれないのかな?」
だけど、どうしても漫画を描き続けていきたい。その気持ちに変わりはありません。
自問自答した結果、どうしても漫画への夢を捨てきれませんでした。
「やっぱり漫画を描く仕事がしたい!」
そこで私は、漫画家デビューする道以外に漫画家になる方法はないのかと考えるようになりました。
漫画雑誌に載っているもの以外で、漫画が使われているところってないの?
最初に思い出したのは、通信教育の教材の漫画。
他にも広告のチラシや学校で配られる小冊子など、私がこれまで見えていなかっただけで、いろんな場面で漫画が使われていることに気が付きました。
「広告の漫画って、誰が作ってるんだろう?」
調べてみると、どうやら漫画制作を行っている会社がある事を知りました。
「漫画制作の会社に入ったら、漫画の仕事ができるんだ!」
私は、就職を目指すことにしました。
さっそく「漫画制作をしている会社に入りたい」という意思を学校にも伝え、相談をしました。
ところが専門学校は、作家志望の人に向けた教育しかしていなかったからか、私の希望はなかなか理解してもらえませんでした。
そして、地元にはそんな会社はないと、漫画風の広告物を作っている会社や作家の卵が登録するスキルシェアの会社ばかりを紹介されます。
「私は作家になりたいわけじゃない、漫画の会社に就職したいんだ!」
学校とも揉めた挙句、私は自分で漫画制作をしている会社に片っ端から連絡を入れることにしました。
「給与も場所もこだわらない!私は漫画の仕事さえできたらいい!」
だけどいくら自分で探しても、漫画制作を専門にした会社は全く見つかりませんでした。
今思うと、私のわがままで本当に先生方を困らせていたんだなと思います。
そんなある時、書類を送った会社のひとつから電話がかかってきました。
いつもはお祈りメール一通で終わってしまう中で、唯一直接連絡をしてきてくれた会社でした。
「正直、今のあなたの実力では、ウチで正社員として働くのは厳しいです」
あぁやっぱりな…としか思いませんでした。
だけどその時の私は、
「連絡があったこの会社に、なんとしてでも繋がりを持っておかなきゃいけない。」
「もうここを逃したら後がない。」
そう感じました。
「とにかく漫画に携わる会社に入りたいんです。お願いします!」
私が涙ながらに訴えると、電話越しからは思いもしなかった言葉が返ってきました。
「正社員は無理だけど、見習いだったら来てもいいよ」
そこは、大阪の漫画専門の制作会社「画屋」。
漫画の仕事ができるなら形態も、場所も、給与も問わない。
その覚悟だった私は、強く返事をしました。
「見習いでもいいから、ぜひやらせてください!」
2021年4月。
プロの現場に入って、ベテランの仕事の速さやクオリティを目の当たりにした瞬間、あまりにも自分は何もできないと思い知らされることになりました。
「今すぐ何かできそうなことない?」
私は今できることをなんとか絞り出して答えました。
「…私、Twitterならできます」
この絶望的な状況で、私はこれからやっていけるのか…どうする私!?
つづく
次のお話:第2話